<食卓の危機>狂牛病が日本を襲った!

(1)「まさか」が現実に

(2)「狂牛病」の致死率は100%
(3)「狂牛病」発生国イギリスの惨状
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(4)なぜ、日本で「狂牛病」が

(5)日本は狂牛病汚染から逃げられないのか

(6)「肉好きの人のために」

(7)牛の感染部位の「危険度リスト」

(8)気になる「牛エキス」食品



<食卓の危機>狂牛病が日本を襲った!

(1)「まさか」が現実に

1980年代にイギリスで猛威を振るった「狂牛病」は記憶に新しい。テレビでは連日のように、よろけて膝を折り、立ち上がろうともがく牛の姿が悲劇的に流され、大量に処分される死んだ牛の様子が報道された。

 どんなに悲劇的な出来事でも日本人にとっては、遠い海の向こうの火事であり、身近なものとして捉え、考えた人は皆無だろう。これが1996年のことだ。

 イギリスを発生源としてヨーロッパを巻き込み、多数の死者さえだした「狂牛病」が過去のこととして日本人の記憶からすっかり薄れてしまっていたが、「狂牛病」は時限爆弾のように姿を現す機会を窺っていた。

 その時がきた。2001年9月、千葉県白井市の酪農場から出された乳牛が、解体処理場で「狂牛病」のおそれありと指摘され、検査の結果、陽性、つまり「狂牛病」と正式に判定された。まさに時限爆弾がその役目を果たした瞬間だった。

 日本人のすべてが「まさか」と驚いただろう。ニューヨークの多発テロに眼を奪われていたときに、感染したら最後、致死率100%の恐怖の「狂牛病」にかかった牛の存在が、日本で確認されたのだ。牛肉は、牛乳は、乳製品は安全なのか。牛脂肪を使った化粧品は、調味料は、スナック、菓子は、どうなのか。日本人の食卓のみならず、生活の隅々にまで知らず知らずの内に入り込み使われている牛の各部位を使った製品。日本の安全神話が繰り返し試され、そして崩壊しようとしている。



(2)「狂牛病」の致死率は100%

狂牛病はブリオン病と総称される。正式には「牛海綿状脳症」(BSE)と呼ばれ、病原体ブリオン(感染性タンパク質粒子)によって引き起こされる。タンパク質はウィルスや細菌のように生命をもっているわけではなく。増殖もしないと考えられていたが、実際には特異型ブリオンが存在し、食物を通して体内に入り正常型プリオンを変化させることが分かってきた。特異型プリオンは体内に入る前の高温処理で消滅することはなく、体内酵素でも分解されずに蓄積され、5年から7年といわれる潜伏期間を経て、脳の神経細胞を破壊しスポンジ状態にさせ、やがては死に至らせる。

 牛がかかる「狂牛病」に似た症状として山羊、羊の「スクレイピー」が確認されている。スクレイピーとは、英語のscrape=こすりつける、を意味している。これにかかった羊は囲いの柵や木の幹に身体をこすりつけ、そのために毛は抜け、血だらけになる。そして歩行もできず、けいれんを起こして死んでしまう。ヨーロッパでは300年前から知られていた羊独特の病気で、解剖の結果、スポンジ脳が確認されている。潜伏期間は1年半から5年といわれ、症状は狂牛病と一致している。

 その他、ニワトリや豚の発症は報告されていない、しかしこれは、たとえニワトリや豚が感染していても、潜伏期間内(発症する前)に食肉処理されているためとの指摘がある。

 人間のプリオン病として「狂牛病」からの感染が疑われているのが「新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」といわれる。新変異型ヤコブ病の特徴は若年者の感染が多い(イギリスの公式発表では平均年齢24歳)ことで「狂牛病」の震源地・イギリスでは2001年5月までに累計で100人以上が発症したと報告されている。

 人が新変異型ヤコブ病に感染したかどうかの判定は、現在のところ血液検査ではできない。結局のところヒトへの感染を防ぐのには、極端に言えば「牛肉を食べない」食生活をするか、牛を解体処理段階でプリオンの付着を防ぐとか、あるいは食用に加工する前の検査を厳しく徹底するしか手段はないようだ。プリオン病はもともと牛100万頭に1頭は自然に発症するといわれていて、その意味では防ぐことのできない自然界の摂理のようなものだが、問題はプリオン病にかかった牛を「肉骨粉」に加工しそれを動物性飼料として健康な牛に与え、その結果「狂牛病」が蔓延する「共食い」になる。


(3)「狂牛病」発生国イギリスの惨状

 人間が食用とする家畜(牛・豚・羊・鶏など)は、解体作業の過程で食用以外の内臓、骨などの部分はかつては産業廃棄物として焼却、埋め立てなどの処分が行われてきたが、ただ廃棄するよりも肉骨粉としてトウモロコシやフスマなどの穀類に混入し、家畜用飼料として利用することが始まった。

 肉骨粉は高蛋白でカルシウム、ビタミン、ミネラルも豊富で、魚を使った飼料よりもはるかに安価で、牛の成長を早め、食肉を多量に得ることができ、乳牛の場合は乳の出をよくし臭いも抑制できるという、理想的でかつ経済的な動物性飼料として世界的に利用は広まった。

 羊毛の国・イギリスは、1970年から80年にかけて飼育数がヨーロッパでは最多を誇り、牛でも3番目に多かった。ちょうどこの時期にスクレイピーにかかった羊が年間5000頭から1万頭発生しており、この汚染された肉骨粉として処理され、牛の飼料に混入された疑いがある。つまり、羊の伝染病が「牛が羊を食べた」ことで動物の種を超え、1986年以降の爆発的な「狂牛病」の発生の原因となった。

 動物の種を超えたことで、いつ牛からヒトへうつるのかが現実的な問題となっていた。

 1996年、イギリス政府は「国内のクロイツフェルト・ヤコブ病の患者は、狂牛病の牛の肉を食べたことによって感染した」と発表した。このニュースにより牛肉の売上は急激に減少し、酪農家は大打撃を受けた。ついに恐れていたヒトへの感染が事実として認定された。

 ヒトへの感染経路の解明が急がれた。その結果、狂牛病に感染した牛の解体処理の過程で、脳、延髄、目など危険とされる部分を除去する際に飛び散った血液が、食肉部分に付着し、それを食したことが分かった。

 イギリスの新変異型ヤコブ病の感染者は公式な発表では100人といわれているが、非公式な数字ではこの数倍の感染者があり、しかも若年者の感染率が異様に高い、といわれている。

 

(4)なぜ、日本で「狂牛病」が

2001年9月、千葉県で狂牛病にかかった牛が公式に確認された。このニュースはアメリカでの同時多発テロとそれに続くアメリカの報復戦争に耳目を奪われ、新聞報道でも大きなスペースを割いているわりには、国民の重大な関心事ではなくなっているようだ。それもあってか所轄の厚生労働省、農林水産省とも明確な発表をしていない。

 狂牛病はどうして日本で発生したのか。感染源と経路が問題となる。千葉の牛は北海道から持ち込まれている。北海道か千葉で肉骨粉入りの飼料を食べた可能性が高い。

 肉骨粉は、イギリスで使用が禁止された後でも、ヨーロッパへの輸出は継続され、さらに日本もかなりな量を輸入した。このためヨーロッパでは、そしてついには日本で発症が確認されることとなった。

 例え、肉骨粉のイギリスから日本への輸入をやめたり禁止しても、イギリスから別の第三国に輸出され、その第三国から日本に入ってきた場合は、経路を調べることは不可能になる。飼料に混入して使う酪農家でも、イギリスからの直輸入ではないため、疑いを持つことなしに牛に食べさせる場合も考えられる。

 感染源は肉骨粉と判明し、輸入肉骨粉がそうであるとしても輸入総量が完全には把握されていない(イギリスからの輸入量は1万トン位と見られる)以上、狂牛病、そして牛肉への不安が解消されず、不安はいよいよ増大していく。

 日本でも「狂牛病」の発生が確認されたいま、いつイギリスのような新変異型やコブ病が人間に起こっても不思議ではない。特に日本では対策・対応が後手に回り、農水省の公式発表に二転三転したため無用な混乱を引き起こし、情報の的確な開示が遅れたため国民の不安を掻き立ててしまった。

 

(5)日本は狂牛病汚染から逃げられないのか

 どっと横倒しになる狂牛病にかかった牛の映像を見せられ、日本でも発生が確認されると「牛肉は危ない」と、「乳製品も危ない」が「牛肉以外なら大丈夫だ」と誰しも思い、考えるだろう。

 確かに現在までに、鶏や豚の発症例は確認されていないがこれらは発症する以前、つまり潜伏期間内(一般に豚の場合は潜伏期間が5年から7年と言われている)を満たすことがなく、殆どが2年から3年で食用処理されているから確認は不可能だ。

 そしてこれらの豚・鶏の内臓・骨などは加工され肉骨粉として牛の飼料になる。

 ノーベル賞学者のガイデュシェック博士によると、ブリオン病原体を接種した豚は、7年以上の飼育するとすべて海綿状脳症にかかったことを確認している。牛肉が危ないから豚肉や鶏肉は安全かと言うと必ずしもそうだと言い切れないことになる。

 ことは牛・豚・鶏などの家畜にとどまらい。2001年3月、日本の厚生労働省は、イギリス、フランス、アイルランド、ドイツ、スペイン、ポルトガル、スイスに6ヶ月以上滞在した者からの献血を禁止した。千葉県で狂牛病にかかった牛が発見される半年前に厚生労働省は「手を打った」わけだが、逆に言えばこの時点で、既にヒトからヒトへの血液を通じた感染も可能性としてはあることを公に認めたことにもなる。

 ヨーロッパ連合(EU)加盟国で作った「狂牛病リスク・アセスメント」によると、世界各国の狂牛病の発生リスクを調査した結果は次のようになる。

<レベル1>BSEは非常に高い確立でありそうにない。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、ノルウェー、ニージーランド、チリ、シンガポール、ニカラグア、ボツワナ、パラグアイ、ウルグアイ

<レベル2>BSEはありそうにないが可能性が全くないわけではない。コロンビア、カナダ、フィンランド、インド、モーリシャス、パキスタン、スエーデン、アメリカ、オーストラリア。


<レベル3>BSEはありそうだが確認されていない。又は低いレベルで確認されている。フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリア、スペイン、スイス、アルバニア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、ハンガリー、ポーランド、スロバキア共和国、ルクセンブルグ、キプロス、日本。


<レベル4>BSEは高いレベルで確認された。イギリス、ポルトガル。

(※注意:BSEとは狂牛病=伝達性牛海綿状脳症のこと)


 以上のように日本は最大汚染国イギリスの<レベル4>に続く<レベル3>と判定されヨーロッパ並の汚染国となっているが、「低いレベルで確認」がいつ拡大し、「高いレベル」となるのか、あるいはレベル・ダウンを図れるのか、いずれにせよ日本人の食卓が危機にされされていることは間違いない。

 

(6)「肉好きの人のために」

 ステーキや焼肉、さらにはどうしても肉を食べたいという人のための「安全な」対処法はあるのか。病原体プリオンは高熱でも冷凍でも死なず、体内酵素で分解されることもない。文字通り煮ても焼いても食えないものだ。感染する危険を冒してまでも肉食をする勇気があれば、食べない決断も必要なのだが、動物性蛋白を摂取しなければならない人も当然いる。

 どうしても食べたい人、摂取しなければならない人にとって食肉を選ぶ基準としては、「安全性の高い食材」にするのが大切なことだ。この場合は「和牛」を選んだ方が良い。「和牛」は黒毛和牛、褐色和牛、日本短角牛、無角和牛の4種がある。これらの和牛は管理、検査などの態勢を考えれば、比較的に安全性が高いとはいえる。


 一般のスーパーで「国産牛」と標示されている肉は、ホルスタインなどの乳牛種が多いが、すべてが「国産」とは限らない。海外で飼育され輸入された牛でも、食肉にする前に3ヶ月以上日本国内で飼育されたものは「国産」の標示が許されているからだ。

 もちろん、「海外飼育の国産牛」のすべてが疑わしいわけではなく管理、検査が杜撰に行われているというのでもないが、少なくとも「和牛」よりも安全性と消費者の安心感の程度においては、リスクは大きくならざるをえない。



(7)牛の感染部位の「危険度リスト」

 東京大学の山内一也名誉教授が作成した狂牛病感染部位の危険度リストによると、「高度感染症」脳、脊髄、目。「中程度感染症」回腸、リンパ節、近位結腸、脾臓、扁桃、硬膜、松果体、脳脊髄益、下垂体、胎盤、副腎。「低度感染症」遠位結腸、鼻粘膜、末梢神経、骨髄、肝臓、肺、膵臓、胸腺。「感染症なし」凝血、心臓、腎臓、乳腺、牛乳、卵巣、唾液、精のう、血清、骨格筋、睾丸、甲状腺、子宮、胆汁、骨、結合組織、毛、皮膚、尿、便。以上の4項目に分けられる。


 このリストのように、一般に食肉とされている筋肉、さらに飲んだり加工されるもっともポピュラーな牛乳は大丈夫だとされ、脳、脊髄、目という神経の中枢部分は完全に危険な部位となっている。

 筋肉には感染性はないとされているg、汚染国・イギリスではステーキとハンバーガーを食べた人の中からも感染者が出ていると報告されている。恐らく解体処理の際に高度に感染した部位が飛び散り、感染したと思われるから、十分な注意をした方がよいことを申し上げておきたい。



(8)気になる「牛エキス」食品

狂牛病の不安が増すにつれて乳製品への不信感が広がっている。危険な食材は食べないでも済むが、原型を変えて加工食品に入っている「牛エキス」は、多くの人が知らず知らずのうちに口にしていることになる。

 加工食品の原料はすべて商品のラベルなどに記載されているから、購入する際には実際に手に取って調べてみる必要がある。

 「牛エキス」は「ビーフエキス」「ビーフブイヨン」などの名称で以下のような食品に使われている場合があるから確認した方がよい。

 コンソメスープ・インスタントカップスープ・カレールウ・ポタージュスープ・チキンコンソメ・ミートソース・インスタントラーメンのスープ・スナック菓子など。


 「牛エキス」はまた、医薬品や化粧品の原料にも使われており、2000年末には厚生労働省は、原料として使ってはならない牛の組織基準をあげている。

 要注意の化粧品として、美白ブームで人気のあるプラセンタ・エキスがある。これは山内名誉教授のリストで「中度感染症」とされた牛の胎盤を使用している場合が多いため、やめたほうがいいだろう。


 また医療器具にも手術用の糸や人工血管などに牛の胎盤が使用され、歯科でもインプラント治療の場合に使用するケースもある。これらの治療にかかるときには、それぞれの専門家に遠慮なく質問し、危険なものは使用しないように、要は自分の身体は自分で守るようにしっかりと習慣づけるようにするべきだろう。

 筆者(森下博士)は40数年前から、ガン、糖尿病、高血圧、心臓病などは、すべて毎日の食事から起こる「食原病」として、医食同源の「自然医食」が身体にもっとも良いと訴えてきた。現在の家庭の食卓にはびこる「三白の害」は白米(白パン)、白砂糖と塩化ナトリウム99,9%のイオン化精製塩などと化学調味料である。

 白砂糖は身体の組織細胞を弛緩させる働きがあり、体内のいろいろな臓器組織(骨や歯などの硬い組織でさえ)をどんどん蚕食してしまう。そのため、甘いもの好きは身体が弱い。いつも胃腸の調子が悪く、風邪を引きやすく疲れやすい。花粉症やアトピーなどのアレルギー体質も、白砂糖(菓子類、料理を含む)と牛乳や卵のとり過ぎが原因である

 科学調味料にも、化学合成物質としての副作用がある。

 以上の「三白」に動物性タンパク質(肉類)が加わると、健康には大変悪く、血液を酸毒化させ、体質を低下させ、病気にかかりやすい身体となってしまう。

 狂牛病やガンなどをはじめとするその他の生活習慣病は「食原病」なので、自然医食療法により多くの方々が、人間が本来持っている健康体になれるように森下式食事療法を覚えて頂きたいものである。

  参考文献:「死の病原体プリオン」リチャード・ローズ著 「狂牛病」リチャード・W・レーシー


<難病も治す自然医食――森下敬一著より抜粋>





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